営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)は「パネルを立てて終わり」ではありません。むしろ本番は、その下でどう農業を続けるかです。今回は、徳島県のある営農型太陽光の現場で実際に行われた改善工事の記録をもとに、うまくいっていなかった畑がどう立て直されたのかをご紹介します。
まず知っておきたい数字:24%の現場で「営農に支障」
農水省の調査によると、令和5年度末時点で全国の営農型太陽光のうち24%(1,221件)で「営農に支障がある」状態が確認されています。その内訳の71%は、単収の減少や生育不良など営農側の問題です。つまり、パネルの下の農業がうまくいっていない現場は、決して珍しくありません。
施工前の状態:浸水、根腐れ、産廃混じりの土
今回の現場では、隣接する水田から水が入り込み、植えていた苗木(サカキ)の根腐れが発生していました。水はけも悪く、雨が降ると数日間水が引かない状態。土壌は砂利・砂や産業廃棄物を含んだ粘質の荒木田土で、栽培には厳しい環境でした。
なぜサカキだったのか
サカキやシキミといった観賞用植物は、実は全国の営農型太陽光でもっとも多い作付けです(件数ベースで観賞用植物36%、うちサカキ・シキミが32%、面積でもサカキは全品目トップの205ha・農水省調べ)。日陰に強く、パネルの下という「遮光された環境」と相性がいいことが理由です。
ただし、サカキ栽培には3つの条件があります。
- ①遮光:杉やヒノキの林の株元に近い、75%程度の遮光が目安とされる
- ②土壌:保水性がありつつ水はけがよく、肥よくであること
- ③肥培管理:年3回の施肥、年4回の消毒
今回の現場が抱えていた「水はけの悪さ」と「土壌の質」は、まさにこの②の条件を根本から崩している状態でした。
実際に行われた15の改善工程
今回の現場では、次のような工程で改善が進められました。除草作業から始まり、苗木の掘り起こし(同時に大石・産廃物の除去)、配線出し、明渠工事、営農用の渡り板の設置、地元産の土(あまつち)の搬入、土壌改良・攪拌・堆肥入れ、畝づくり、農業用水の止水用あぜ板設置、苗木の定植、防草施工、調整池・防護柵の設置、吸排水溝のモルタル工事、配線図の作成と、全部で15の工程です。中でも特に印象的だった3つを紹介します。
①明渠(めいきょ)工事:溜まった水を逃がす排水路
圃場内に溜まった余分な水分を排出するための水路「明渠」を掘り直しました。ポイントは、明渠の深さを田んぼの土よりも低くすること。表面排水だけでなく、土壌の下への浸透も期待できる設計です。バックホウを使って鋤取り・盛土搬入を行い、降雨後も明渠と調整池の水位を確認しながら仕上げています。
②配線出し:数センチ下に眠る、命に関わる配線
この現場では、高圧の電流が流れる配線が地面からわずか数センチ下に埋まっていました。もしスコップや農機具で断線させてしまえば、作業員が即死しかねない高圧電流です。正確な位置がわからないままでは、機械を使った効率的な営農はできません。そこで配線を掘り出して位置を明確にし、安全に機械作業ができる環境をつくりました。営農型太陽光の「下で農業をする」という前提を支える、地味だけれど欠かせない工程です。
③土壌改良:地元産の土と堆肥で、根の張れる畑に
産廃混じりだった土壌に、地元・阿波産の「あまつち」を搬入。攪拌・堆肥入れを行ったうえで、根が張りやすいよう高畝(周囲より高く盛った畝)をつくり、苗木(4〜5年生)を定植しました。仕上げに針葉樹皮やヨシズ・遮光ネットで防草施工を行い、除草の手間を減らす工夫もされています。
この事例からわかること
営農型太陽光で「営農に支障」が出る主な原因は、単収の減少や生育不良です。今回のケースは、その原因(排水不良・土壌の質)を一つずつ特定し、明渠工事や土壌改良という具体的な工程で解消していった例だと言えます。あわせて、高圧配線のような安全上のリスクにもきちんと向き合っていた点も見逃せません。
「パネルを設置すること」自体は入口に過ぎません。栽培する品目に合った遮光・土壌・排水の設計と、現場のリスクまで含めた施工管理ができるかどうかが、営農型太陽光を長く続けられるかの分かれ目になります。
「うちの畑、実は水はけが悪くて心配」「営農型を検討しているけど何から確認すればいいかわからない」など、気になることがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。