2026年11月1日から、静岡市で「静岡市太陽光発電施設の適正な設置及び維持管理に関する条例」が始まります。7月9日に市議会で可決された条例で、これまで市が「ガイドライン(お願い)」として示してきた内容が、許可や届出、罰則のあるルールに変わります。ガイドラインは10月31日で廃止されます。
条例の中心は、太陽光を建てる事業者に向けた決まりです。ただ、条文を読むと、土地を貸す地主さんや、となりの土地の持ち主にも関係するところがいくつかあります。この記事では、静岡市の条例の原文をもとに、「土地を太陽光に貸してほしい」という話が来たときに、契約の前に確かめておきたいことを整理します。
似たような条例は、ほかの市町村や県でも作られています。静岡市以外に土地をお持ちの方も、「自分の市町村にも同じような決まりがあるかもしれない」という目で読んでみてください。
何が変わるのか。対象は10kW以上の「野立て」
対象になるのは、静岡市内の出力10kW以上の太陽光発電施設です。建物の屋根や屋上に載せるものは対象外なので、主に土地の上に直接建てる、いわゆる「野立て」の太陽光が対象です。今ある設備を増やして合計が10kW以上になる場合も含まれます。
そのうえで、建てる場所によって手続きが2つに分かれます。
| 建てる場所 | 必要な手続き |
|---|---|
| 14の「設置規制区域」の中 | 工事を始める前に市長の許可が必要。土地の一部でも区域にかかれば許可の対象 |
| 区域の外 | 工事を始める前に市長への届出が必要 |
どちらの場合も、許可の申請や届出の前に、地元の自治会の方や、となりの土地・建物の持ち主などに事業の計画を説明することが事業者に求められています。
許可が必要になる14の区域
「設置規制区域」は、土砂災害や自然環境、景観への影響が心配される場所として、条例で次の14の区域が決められています。
- 地域森林計画の対象になっている民有林、保安林
- 地すべり防止区域
- 急傾斜地崩壊危険区域
- 土砂災害警戒区域(特別警戒区域を含む)
- 砂防指定地
- 鳥獣保護区(市街化区域を除く)
- 自然公園の特別保護地区・特別地域
- 南アルプスユネスコエコパークの核心地域・緩衝地域
- 風致地区
- 農用地区域(いわゆる「青地」の農地)
- 自然共生サイト
- 景観法の重点地区
- 名勝三保松原・名勝日本平の指定範囲
- 世界遺産・富士山の構成資産「三保松原」の範囲と緩衝地帯
山林や、山すその土地、農用地区域の農地をお持ちの方は、当てはまる可能性があります。なお、許可の具体的な基準(どういう計画なら許可されるか)は、市のページで「確定次第公開」とされていて、2026年10月5日の時点ではまだ公表されていません。
土地を貸す前に確かめたい3つのこと
条例の手続きをするのは事業者です。それでも、地主さんが契約の前に確かめておくと、あとで困ることが減るポイントがあります。
1. 自分の土地が「設置規制区域」に入っていないか
区域の中なら、工事の前に市長の許可が要ります。許可の手続きには、造成や排水の計画図、維持管理の計画、後で説明する保証金など、たくさんの書類が必要です。許可が出るまで工事が始まらないので、地代が入りはじめる時期が遅れたり、計画そのものが止まったりすることもありえます。
また、条例の第5条には、土地の所有者についての決まりもあります。災害を起こしやすくしたり、自然環境や景観を損なったりするおそれのある事業者には、土地を使わせないように努めなければならない、というものです。罰則のない「努力義務」ですが、「どんな相手に貸すか」を地主さんも考えてほしい、という市の考え方が表れています。
2. 近所への説明を、事業者がきちんとする計画か
許可や届出の前に、事業者は地域の方への説明をしなければなりません。説明の相手には、地元の自治会の方だけでなく、となりの土地の持ち主や借りている人、となりの建物の持ち主や借りている人も入っています。
地主さんにとっては、ご近所づきあいに直結する話です。「説明はいつ、誰に、どうやってするのか」を事業者に聞いておくと安心です。逆に、自分の土地のとなりで太陽光の計画が持ち上がったときは、説明を受ける側になります。
3. 撤去の費用を、誰がどうやって用意するのか
この条例で目を引くのが、撤去費用の決まりです。設置規制区域の中に新しく建てる場合、事業者は、パネルの解体・撤去・処分にかかる費用(廃棄等費用)を現金の保証金として金融機関に預け、市がその預金に質権(いざというとき市が使える権利)を設定することが、許可の条件になっています。保証金の額は、国の基準で計算した額と、その事業の見積額のうち高いほうです。
区域の外に建てる場合や、すでにある施設についても、事業者は廃棄等費用を確保しなければならないとされています。ただ、区域外では市に保証金を預ける形にはなっていません。契約書の中で、撤去の費用を誰が持つのか、土地を元に戻す(原状回復)のは誰の責任かを、あわせて確かめておきましょう。20年後の片づけの話は、太陽光を貸した土地、20年後のパネルは誰が片づけるのかで詳しく書きました。
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すでに貸している・相続した場合は
2026年11月1日より前に工事を始めた施設(既存施設)は、許可の手続きは要りません。ただし、事業者には次のことが求められます。
- 設置規制区域の中にある既存施設:2027年4月30日までに、事業の概要の届出、標識(事業者の名前などを書いた看板)の掲示、維持管理計画の作成・公表・届出。施設の設置が終わったあとは、毎年度の報告も必要
- 区域の外にある既存施設:2027年4月30日までに標識の掲示。維持管理計画の作成・公表は努力義務
これらは事業者の手続きなので、土地を貸しているだけの地主さんが自分で出す書類はありません。ただ、来年の春以降、現地に事業者の名前や連絡先が書かれた標識が付くはずです。「親が貸していた土地の事業者が誰か分からない」という方は、それが確かめるきっかけになります。
注意したいのは、発電所そのものを相続した場合です。発電所の事業を相続した人は、事業者の立場を引き継ぐことになり、条例では相続から30日以内に市へ届け出ることが決められています(既存施設も同じです)。土地だけを相続したのか、発電所も相続したのかで、やることが変わります。
守られないとどうなるか。地主さんへの影響も
条例が守られない場合、市は指導・助言、報告を求めることや立ち入り検査、勧告、命令と段階を踏んで対応します。そのうえで、許可の取り消しや事業者の名前の公表、罰金が科されることがあります。罰金は、命令に違反した場合で50万円以下、許可を受けずに設置した場合で30万円以下などです。
さらに、名前が公表された場合、市は国に対して、その発電所のFIT/FIPの認定(電気を決まった条件で買い取ってもらうための国の認定)の取り消しを求めることになっています。認定が取り消されれば事業が続けにくくなり、地代の支払いにも影響が出るおそれがあります。ルールを守る事業者かどうかは、地主さんにとっても他人事ではありません。
まとめ
静岡市では2026年11月1日から、10kW以上の野立て太陽光について、14の区域では市長の許可、それ以外でも届出が必要になります。土地を貸す話が来たら、契約の前に次の3つを確かめておくと安心です。
- 自分の土地が、設置規制区域にかかっていないか
- 近所やとなりの土地の方への説明を、事業者がどう進めるのか
- 撤去の費用と、土地を元に戻す責任が、契約書でどうなっているか
静岡市は2026年10月21日に、条例の説明会(会場とオンライン、後日のアーカイブ配信あり)を開く予定です。制度の内容は今後変わることもあるため、実際の手続きの要否は、市の窓口でご確認ください。
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