「蓄電池の用地として、土地を貸していただけませんか」。そんなお声がけを受けた地主さんから、最近こんなご相談をいただくことがあります。
「話を聞いたばかりなのに、早く契約書を交わしたいと言われた。何か急ぐ理由があるの?」
急がせるなんて失礼だ、と感じるのは自然なことです。ただ、事業者の側にも事情があります。2026年10月1日から、電気をつなぐ手続きのルールが変わり、土地の書類を期限までに出せないと、せっかく確保した「電気の枠」が取り消されるようになるからです。
この記事では、何が変わるのかを国や業界の資料をもとに整理し、声をかけられた地主さんが確認しておきたいことをまとめました。
そもそも「電気の枠」とは何か
蓄電池(電気を貯めておく大きな設備)を動かすには、電力会社の電線につなぐ必要があります。ただし、電線が受け入れられる電気の量には限りがあります。そこで事業者は、電力会社に申し込んで「ここにつないでいいですよ」という承諾(連系承諾)をもらい、つなぐ権利を先に確保します。この記事では、これを「電気の枠」と呼びます。
この枠は、早い者勝ちの面があります。ところが近年、土地の目途が立っていないまま枠だけを押さえる申し込みが増えてしまいました。業界では「空押さえ」と呼ばれています。
業界誌の報道では、系統用蓄電池(電線につないで電気を出し入れする蓄電池)の接続検討(つなげるかどうかの事前調査)の申し込みは、2024年度に9,544件で、前年度の約6倍に急増しました。本当に建てる予定の事業者が、枠を取れずに待たされる状態が生まれていたのです。
2026年、手続きのルールは3回変わりました
空押さえを減らすために、2026年は段階的にルールが厳しくなっています。10月1日のルールは、その3つ目にあたります。
| 2026年 4月1日〜 |
系統用蓄電池の申し込み時に預ける保証金が、工事費負担金の見込みの5%から10%に。工事費を分けて払う場合も、初回に総額の50%以上が必要に。4月1日以降に電力会社が申し込みを受け付けた案件が対象です。 |
|---|---|
| 2026年 8月1日〜 |
接続検討(事前調査)を同時に持てる件数に、1社・1エリアあたりの上限。国の資料の参考試算では、東京エリア11件、中部エリア5件など(正式な数は各電力会社が公表)。 |
| 2026年 10月1日〜 |
国の買取制度(FIT・FIP)を使わない発電設備や系統用蓄電池は、連系承諾から原則2か月以内に、土地を使う権利を示す書類の提出が必要に。出さないと予約が取り消されることがあります。 |
地主さんに一番関係が深いのは、3つ目の10月1日のルールです。次で詳しく見ていきます。
10月1日から:「2か月以内に土地の書類」
新しいルールの流れを図にすると、次のようになります。
「土地の書類」とは、どんなもの?
求められるのは、その事業者が、その土地を使ってよいことを示す書類です。具体的には次のようなものが例に挙がっています。
地主さんから土地を借りて蓄電池を建てる場合、事業者が出すことになるのは多くの場合、地主さんと交わした賃貸借契約書の写しです。つまり、地主さんとの契約が書面になっていないと、事業者は電気の枠を持ち続けられません。「早く契約書を」というお願いの背景には、この期限があるわけです。
対象になるもの・注意点
- 対象——国の買取制度(FIT・FIP)を使わない発電設備と、系統用蓄電池。FIT・FIPの設備は、別の制度ですでに土地の確認がされているため対象外です
- 始まる時期——電力会社の約款(手続きのルールブック)が変わった日以降に契約を申し込む案件から。2026年10月1日の実施が見込まれています
- 例外——2か月以内の提出が合理的に難しいと認められる場合は、別の期間が適用されます。すでにある設備の改修などの扱いは、別途公表とされています
- 設備の大きさによる違い——東京電力パワーグリッドなどの案内は、高圧・特別高圧(比較的大きな設備)を対象にしています。出力50kW未満の低圧(小さな設備)の扱いは、電力会社ごとに確認が必要です
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地主さんにとって、このルールは悪い話ではありません
「急かされるのは困る」と感じた方もいるかもしれません。けれど、地主さんの側から見ると、このルールには良い面もあります。
これまでは、土地の契約がないまま枠だけ押さえておき、あとから地主さんを探す、という進め方もできてしまいました。その結果、「話はあったのに、いつまでたっても何も始まらない」ということも起こりえました。
新しいルールでは、本当に建てる気のある事業者ほど、早い段階できちんと書面を交わそうとします。言いかえれば、書面の話がきちんと出てくる相手のほうが、計画が本気である可能性が高い、とも言えます。
声をかけられたら、確認しておきたい4つのこと
むずかしい専門知識は要りません。次の4つを事業者に聞いてみるだけで、話の見通しがかなりよくなります。
- ① いま、手続きのどの段階か——まだ事前調査(接続検討)の段階なのか、すでに電力会社から承諾をもらっているのか。承諾済みなら、2か月の期限がすでに動いている可能性があります
- ② 契約の種類と期間——土地を貸すのか、売るのか。貸す場合は何年間で、途中で解約できる条件はどうなっているか
- ③ 枠が取り消されたときの扱い——電力会社の手続きがうまくいかなかった場合に、契約がどうなるのか(白紙に戻るのか、何か支払いがあるのか)が書かれているか
- ④ 書類の提出先と範囲——契約書の写しが電力会社に提出されることを、あらかじめ説明してもらえているか
このうち③は、とくに大事なところです。新しいルールでは、枠が取り消されることが以前より起こりやすくなります。「取り消されたら、この契約はどうなるのか」を事前に書面で決めておくことで、あとから話がこじれるのを防げます。
なお、太陽光の用地として貸す場合の「20年後の片づけ」についても、契約書で確認しておきたい点があります。太陽光を貸した土地、20年後のパネルは誰が片づけるのかもあわせてご覧ください。
まとめ
- 2026年10月1日から、FIT・FIPを使わない発電設備や系統用蓄電池は、連系承諾から原則2か月以内に土地の書類を出すことが必要に
- 出さないと、確保した電気の枠が取り消されることがある。だから事業者は、地主さんとの契約を急ぐ
- 2026年は4月(保証金)・8月(件数の上限)・10月(土地の書類)と、3段階でルールが厳しくなった
- 地主さんにとっては、本気の事業者を見分けやすくなる面もある
- 契約の前に、段階・契約の中身・取り消し時の扱い・書類の提出先の4つを確認しておく
私たちも、蓄電池の用地として土地をお預かりする立場の会社です。だからこそ、期限があるからといって地主さんに判断を急いでいただくのではなく、手続きの状況を最初にご説明するようにしています。「声はかかったけれど、この話で大丈夫なのか」という段階のご相談でも構いません。
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