「相続したけれど耕していない畑がある。金額は大きくないけれど、毎年ずっと固定資産税を払っている」。よくあるお話です。そして、そのまま何年も過ぎていく——というのも、とてもよくあることです。
ただ、あまり知られていないことがあります。使われていない農地は、条件がそろうと固定資産税の計算が変わり、税額が上がることがあるのです。この記事では、その仕組みを順番に説明します。不安をあおるための話ではなく、「どういう順番でそうなるのか」を知っておくための整理です。
そもそも、農地の固定資産税は低く抑えられています
農地の固定資産税は、宅地に比べるとかなり低い金額になっています。理由のひとつが、評価額を計算するときに「農地は収益が上がりにくい土地だから」という前提で割引がかかっていることです。専門的には「限界収益修正率」と呼ばれる係数で、0.55という数字が使われています。ざっくり言えば、農地の評価は約55%に抑えられている、ということです。
この割引があるおかげで、広い畑を持っていても税額が年に数千円〜数万円で収まっているケースが多いのです。
「遊休農地」と判断され、勧告を受けると、この割引が外れます
問題はここからです。2017年度(平成29年度)から、使われていない農地のうち一定のものについて、この0.55の割引を適用しないという取り扱いが始まりました。割引が外れるので、税額はおおむね1.8倍(1÷0.55)になります。
ただし、「使っていないから即1.8倍」ではありません。次のような段階を踏みます。
ポイントは、③の勧告を受けた農地が対象という点です。農業委員会は毎年、農地の利用状況を調べています。そこで「使われていない」と判断されると、「今後どうするつもりですか」という利用意向調査が届きます。それに答えなかったり、答えた内容が実行されなかったりすると、「農地バンク(農地中間管理機構)と話し合ってください」という勧告に進み、勧告を受けた農地について、翌年度から評価の割引が外れる、という順番です。
また、対象になるのは農業振興地域の農用地区域にある農地、いわゆる「青地」に限られます。青地・白地の違いについては農地が売れない理由の記事で図にしていますので、あわせてご覧ください。
逆に、貸すと軽くなる仕組みもあります
使われない農地を増やさないための制度なので、反対の方向、つまり農地バンクに貸し出した場合には固定資産税が軽くなる仕組みも用意されています。一定期間以上の貸し付けが条件になりますが、「耕せないけれど手放すのも決めきれない」という方には現実的な選択肢のひとつです。
ただし、この軽減措置は2026年4月に要件の見直しが行われており、対象となる条件や期間の扱いは市町村によって案内が異なります。検討される場合は、必ずお住まいの市町村の農業委員会でご確認ください。
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払い続ける以外に、選べる道は3つ
「金額は小さいけれど、この先ずっと払い続けるのか」と感じている方が取れる方向は、おおまかに3つです。
- 貸す——農地バンクを通じて地域の農家さんに借りてもらう。荒れるのを防げて、軽減が受けられる場合もあります
- 売る——農地のまま農業をする方に売るか、農業以外の使い方を前提に買い手を探すか。詳しくは「農地は売れない」と言われる本当の理由で書きました
- 自分で使う——一部だけでも耕す、地域の方に管理をお願いするなど。手はかかりますが、荒廃を止められます
どれを選ぶにしても、まず必要なのは「その土地がいまどういう条件にあるか」を知ることです。相続の手続きがまだ途中の方は、農地を相続したら、まず何をすればいい?から読んでいただくと順番がわかりやすいと思います。
まとめ
農地の固定資産税はもともと低く抑えられていますが、その割引は「農業に使われていること」が前提にあります。使われない状態が続き、勧告まで進むと、割引が外れておおむね1.8倍になる仕組みがあります。ただし、そこに至るまでには調査・意向確認・勧告という段階があり、途中で手を打つことができます。
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